11/13&14ポール・マッカートニー東京ドームライブ


ポール・マッカートニーが登場する前、ヨーロッパの宮廷に出て来る人や、フラメンコ、京劇の格好をした人たちの前衛パフォーマンスがありました。ものすごい体の軟らかい人が、金魚の水槽にえびぞりでスッポリ入っていたのが驚きでした。

さて、曲についての感想を述べます。なお、13日と14日の2回公演を合わせた感想を述べます。

1曲目は、「Hello Goodbye」(1967)でした。ポールはヘフナーのベースでした。ビートルズ(以下B)の原曲でのバイオリンパートは、エレキギターが担当していました。オリジナルは、曲の終わりがフェードアウトでしたので、どのように終わるか興味深かったのですが、「♪Hello,heba hello」のあと、「I don't know why you say goodbye I say hello」の部分を繰り返して歌って終わりました。

2曲目は、ウィングス時代の「Jet」(1974)で、サビの「Jet!」ではお客さんも一緒に叫びました。3曲目は、再びB時代の「All My Loving」(1963)です。舞台の背景のバックには、60年代当時、Bを見て熱狂するファンの映像が映し出されていました。

4曲目の前に、「ハロートキオー」と、日本語で挨拶しました。60年代のB時代に作って、今までライブで演奏しなかった「Getting Better」(1967)をやりました。レスポールエレキギターに持ち替え、印象深いイントロも演奏していました。5曲目は、再びベースで、ソロ時代の「Coming Up」(1980)でした。歌う前、「♪ブ〜ギウ〜ギ〜」と紹介しました。12年前の、ヘビーなリズムを強調したワールドツアーでの演奏よりも、よりオリジナル(と言ってもライブバージョン)に近かったです。6曲目は、レスポールのギターに持ち替え、ウィングス時代の「Let Me Roll It」(1974)を力強く演奏しました。

そして、昨年発売した『Driving Rain』からの3曲を演奏する時になって、気合いを入れるためか、白いジャケット(13日は紺?)を脱ぎ、赤いTシャツで演奏を始めました。9曲目の「Your Loving Flame」は、6月に再婚したヘザーさんに捧げる曲とのことで、「これぞ、マッカートニーバラード!」という感じでした。

10曲目からは、ポールがギター1本で弾き語るコーナーになりました。「ボクトミンナトノジカン」と、ポール自身が言ってくれました。まず、B時代の曲でウィングス公演でもよく演奏された「Blackbird」(1968)を歌う前、この曲は当時人種差別に苦しんでいた黒人女性に捧げた曲と紹介しましたが、それは初めて聞きました。「シミンウンドウ」という日本語も言ってくれました。
次に、ソロ時代の「Every Night」(1970)、B時代の「We Can Work It Out」と続きます(サビの部分「♪Life is very short〜」を自分でもハモりました)。そして、ピアノで「You Never Give Me Your Money〜Carry That Weight」(1969)のメドレーを歌いました。「♪Got a suck〜」の部分は、少し小節を詰めて歌っていました。13曲目の「Fool on The Hill」では、『Magical Mystery Tour』の映像がバックに流れ、現在のポールの顔とちょうど比べて見られました。

そして、1980年に亡くなったジョン・レノンに捧げた「Here Today」(1982)では、「亡くなった人に、亡くなる前になぜ言っておかなかったんだろうと後悔することがあるよ。これは、ジョントボクトノタイワ」と言いながら歌い始めました。歌詞の、「If you were here today(もし君が今日ここにいたら)」「For you were in my song(だって、君は僕の歌の中にいたよね)」という部分で、思わず涙が出てきました。また、曲が始まる前に、「ジョンに拍手を!」とポールが叫ぶと、客席の皆さんが本当に暖かい拍手をしたことにも泣けてきました。

もう一人の盟友、2001年に亡くなったジョージ・ハリスンに捧げる「Something」では、ウクレレで演奏しました。バックの映像では、ジョージの姿が流れ、これまた涙を誘いました。

再び、バンドのメンバー(と言っても、キーボード担当のウィックス)が加わり、B時代の「Eleanor Rigby」(1966)が始まりました。ストリングスはシンセですが、弦楽合奏団の映像が背景に流れ、本当に生の弦楽器で伴奏しているようでした。そして、19曲目の「Here Ther And Everywhere」(1966)では、他のメンバーが美しいハーモニーで加わりました。
記念すべき20曲目は、「フランスニユコウカ〜!」という言葉で始まった「Michelle」(1965)です。ウィックスのアコーディオンに、他のメンバーのやはり美しいハーモニーが印象的でした。背景のフランスの街並みの映像もきれいでした。

そして、生ギターをベースに持ち替え、ウィングス時代の「Band On The Run」(1974)で再び盛り上がりました。次の「Back In The USSR」では、中間のコーラスでは、自分で裏声でハモりました。3rdコーラス目には、バックの16ビートギターのリズムに合わせて、自分の体も小刻みに16ビートで動きまわり、倒れそうでした。(^^;)

まだまだ続きます。70年のソロ曲「Maybe I'm Amazed」は、バラードなのですが、途中のギターソロもかっこよく、エイブのドラムに乗せられて、自分自身飛び上がりながら聴きました。

一息つくために、ウイングス時代の「Let'em In」(1975)で淡々としたリズムの中、少しお休みモードになりました。さらに、亡きリンダに捧げた「My Love」(1973)で、また泣きました。「Don't ever ask me why I never say goodbye to my love(君にさよならを言えない理由なんて聞かないで)」という部分が、特に涙を誘います。そして、9月から始まったツアーで初めて演奏されたB時代の「She's Leaving Home」も、ストリングスをハーモニーが大変美しかったです。

さあ、またロックナンバー全開です。B時代の映画『A Hard Day's Night』挿入歌でもある「Can't Buy Me Love」(1964)では、背景に映画のシーンの映像が流れ、多分映画をご覧になっていない方でも楽しめたでしょう。28曲目の「Live and Let Die」(1973)は、ロジャー・ムーア主演の映画『007 死ぬのは奴らだ』のテーマです。最初は、ピアノの弾き語りバラードから始まり、途中アップテンポのインストになるのですが、もう狂ったように踊りました。そのインストの直前にマグネシウムが大音響と共に大爆発して、迫力がありました。ウィングス時代や90年の日本公演でも映像は見ていてわかってはいましたが、それでもやはり驚きました。曲が終わってからもう一度爆発があり、舞台上に火の玉が8つくらい現れ、爆発後の煙の中、ポールがおどけて咳き込みながら両手を振り、「煙はゴメンだ(笑)」と言っていました。あまりに暴れすぎて、「死ぬのは自分だ」などと、チラッと思いました。(^^)

ロックナンバーで完全燃焼したその後は、お待たせの「Let It Be」です。間奏のギターソロは、ラスティ・アンダーソンが「今ジョージが生きていたらこういうように弾いただろう」と想像しながら演奏したそうです。「There is still a light that shines on me,shine until tomorrow(光はまだあるよ、明日まで気君を照らし続ける光がね)」という部分で、又泣きました。

そして30曲目は、「Hey Jude」です。ラストの合唱前「♪Then you begin」の直前にポールがやっていた「オー!」というアドリブボーカルも、しっかりやらせて頂きました。σ(^^)もちろん、大合唱では、腹の底から声を出しました。途中「オトコダケ」「オンナダケ」と男女別々に歌ったりしました。

さあ、アンコールです。なんとポールは、日の丸の旗を振って舞台をかけ回ってくれました。なんて元気なんでしょう!Tシャツには、「No more land mines(地雷はもういらない)」と力強く書かれていました。

ここからは、B時代の名曲オンパレードです。解散直前のアルバム『Let It Be』に収録された「The Long and Winding Road」(1970)でマッカートニーバラードの真髄を聴き、ロックナンバー「Lady Madonna」(1968)で盛り上がりました。背景の映像では、マザー・テレサオードリー・ヘプバーンエリザベス女王アレサ・フランクリン(?)などの映像が流れました。「♪See how they run」の部分で、陸上の映像が流れて、思わず笑ってしまいました。

再びピアノをベースに持ち替え、33曲目に歌った「I Saw Her Standing There」(1963)では、14日の公演ではファンの方4人(男性1人、女性3人)が舞台に上がり、男性はおもちゃのベースを抱え、他の3人は、リズミカルに踊りました。「舞台の上に上がって演奏する気持ちよさを味わって欲しい」との、ポールの粋なはからいに感心しました。

14日の2度目のアンコールでは、新婚のヘザーさんが、「祭」と書かれた紺のハッピを着せに舞台に現れました。きつく抱き合って、仲の良さを見せてくれました。他のメンバーも、浴衣のような柄のハッピを着て楽しそうでした。

そして、生ギターで「Yesterday」(1965)の演奏を始めました。テンポはゆっくりで、Eleanor〜」同様、ストリングスをウィックスが演奏しました。とてもきれいでした。観客の皆さんも、右に左に揺れていました。

いよいよラスト35曲目の「Sgt. Pepper's Lonely Heart's Club Band (Reprise)〜The End」が始まる前、首を左にかしげて、右手と左手で「おねんね」のポーズをしながら、「もう家に帰れなければならないから」と言いその仕草は、B時代と同じでした。(^^)楽器は、今日3度目のレスポールエレキギターでした。「The End」のソロでは、アルバム『Abbey Road』に程近い演奏パターンでした。もちろん、狂ったように飛び上がりながら踊りまくりました。最後の

「And in the end, the love you take is equale to the love you make(結局は、君が得ようとしている愛は自分で作る愛と同じなのさ)」という歌詞の後、背景に朝日が出て来る映像に、また涙が出てきました。「明けない夜はないんだなあ〜」と思いました。

とにかく、一生の思い出となるコンサートでした。生きる希望が湧いてきました。ポールを始め、バンドメンバー、ヘザーさん、スタッフの皆さんに心から感謝します。今回、ポールが話した言葉を字幕キャプションに瞬時に翻訳してスクリーンに映すという試みにはじめて携わって頂いた翻訳スタッフの皆さんには、敬意を評します。

もちろん、ビートルズ時代に共に活躍したジョン、ジョージ、リンゴ、マネージャーだったエプスタイン、プロデューサーのジョージ・マーティンウィングス時代から亡くなるまでポールを支え続けたリンダ、デニー・レーンなど他のメンバー、90年のツアーでのメンバーなど、ポールに関わった全ての皆さんに、感謝、感謝です。

来日前は、「もうこれが最後か?」などと噂されましたが、パンフレットのポールの言葉にある通り、「90歳になっても車椅子でステージに上がり」続けて欲しいです。